神戸市北区の鈴蘭台にある内田家住宅の見学に行ってきました。
内田家住宅は入母屋造の茅葺きで平入、江戸中期に建てられたとされています。
生憎の雨模様でしたが、茅葺き屋根の本領発揮といった具合。
母屋では屋根の厚みが60㎝ありました。
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平成27年に葺き替えられた門の茅は刈り揃えられ、整っていました。
母屋の保存修理工事が平成15年から3年かけて行われたそうなので、工事完了後10年以上経過していることになります。時間経過の異なる茅葺きの状態を一度に見られるのも見どころです。
整形四間取の平面を持ち、小屋構造をオダチトリイ組とする内田家住宅。
エンガワに出て上を見上げると通常の民家では見かけない
鎌のように曲がった部材が目に留まりました。
上屋柱(上の写真の左筋)と下屋桁(上の写真の右筋)を結ぶ「繋ぎ梁」
寺院の軒支輪のような、和製フライングバットレスのような・・・
独特の表情を出しています。
小屋組みがそのまま意匠になっていることが多く、
ついつい上を見上げる時間が長くなります。
少し視線を下げて・・・
土壁の一部は修理前のものが見ることができます。
そのためには壁を“生け捕り”してパネル状にした状態で、
改めては現場にはめ込んでいます。
上の写真をよく見ると土壁が額に納まっているのが分かります。
正面に見えている材は貫ではなく、押え材だと思われます。
カマドの焚口が黒く煤けていますが、これは使用している証拠。
と言ってもここで生活をしているわけではありません。
地元の小学生の校外学習の時などにお米を炊いたりするそうです。
煙突がなく、酸素供給は手前の焚口からのみ。
火をくべるのにコツがいるそう。
写真では分かりにくいですが、写真手間から焚口に向かって緩く勾配がついています。
手前からバケツ1杯の水を流せば、全ての焚口に流れ込み、一気に消火できる工夫だそう。
煙突がない理由は、煙をあえて室内に貯めるため。
屋根の茅がいぶされ、虫がつかない工夫です。
カマド一つとっても先人の知恵がたくさんあります。
もう少し下にも着目。
この写真の上の部分は修理前には室内化された縁側だったようですが、
修理工事で濡れ縁(外部に開放された縁)に変更されています。
設計変更をしたのは なぜ?
上の写真の敷居の外側1本の溝の風蝕が他の2本に比べて著しく、
当初は外部に面していたという痕跡があるから。部材の痕跡は大事な情報源です。
そういう目で見学してみると、違った一面が見えてくるかもしれません。
探偵気分で建物を見ているとあっという間に時間が過ぎていきます。
内田家住宅【兵庫県指定重要有形文化財】
所在地:神戸市北区鈴蘭台西町6丁目8-8
構 造:入母屋造 茅葺 平屋 平入
面 積:157.5㎡
所有者:神戸市
交 通:神戸電鉄鈴蘭台駅下車 北へ徒歩約15分
(パンフレットより抜粋)
基本的に毎週土曜日の9時~16時、見学可能です。
ただし、梅雨時期に入る6月から7月中旬までは見学できないそうですので事前にご確認を。
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仕立建築舎 平賀
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