街道を挟んで海側が①妻入りの舟屋、山側が②平入りの母屋。
地域の気候や地形により必然的に 妻入りもしくは平入り の統一された町並みとなることが多いですが、ここ伊根ではその枠にはまらないことに疑問を感じたのです。
ここで伊根の地形を見てみると…
伊根湾は日本海に面しているものの、伊根湾の入口にある青島が天然の防波堤の役割をしているおかげで、とても穏やかな入り江になっているそうです。
(確かに雪が舞う風の強い日でしたが、伊根湾は非常に大人しい波でした。)
そうなると、強い海風を受けることもなく、
垂直の壁面積が大きい(風を受けやすい)妻入りでも問題なさそうです。
舟屋はあくまで舟の収蔵庫になるので、そこまで間口(建物正面の幅)を必要としません。
一方、間口が舟屋よりも大きい母屋は、背面に岩山が控えている立地ですので、
極力その地形に沿うように、という意図が感じられます。
妻入りの場合、建物の一番高い部分が軒先にまで出てきますが、
平入りの場合、屋根勾配に沿って徐々に建物が高くなるので、
正面から見た時に軒の高さが抑えられていて、圧迫感が抑えられる視覚効果もあります。
広大な土地に建物を建てる際はそこまで建物の高さは気にならないかもしれませんが、
山と海が近く、限られた土地に、細い街道に沿って両側に建物を建てる時の配慮かもしれません。
また、母屋の背面に迫った岩肌を切り出す手間を考えると、
山に近い部分の建物高さを抑えて建てるというのは合理的です。
それにしても舟屋が妻入りである理由が今一つスッキリとしません。
“なぜ平入りではなく、妻入りの町並みになったのか”宿題が残りました。
何気なく歩いている町並みでも、少し違う視点をもってみると、
普段の風景が少し違ったものに見えてくるかもしれません。
結局、結論(正解)には至りませんでしたが、
そんなことを考えながらの天橋立・伊根訪問となりました。
機会があれば、もう少し掘り下げてみようと思います。
おまけ
湾巡りの途中、トンネル抜け。
山と海の距離が近く、色々なシーンが楽しめました。
線路は無いけれどスタンド・バイ・ミーを髣髴とさせるシチュエーションに浸っていると、
トンネルを抜けたところでお猿さんの歓迎(?)が!
ヒトよりもお猿さんに遭遇することの方が多く、少々緊張しながらの伊根のお散歩となりました。
舟屋とセットで建てられていることが多い土蔵には、各々ユニークな鏝絵が出迎えてくれました。
上を向いて歩き続けると首が痛くなるのでご注意を。
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仕立建築舎 平賀
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